私は過去に2つの山岳会にそれぞれ2年づつ所属していた時期がありました。
初めて入会した山岳会は総合型の大きな山岳会。2回目は沢登り専門の比較的小規模な山岳会です。
山岳会と聞くと、ちょっとめんどくさそうという印象があるかと思いますが、そして、確かに面倒な部分もあるのですが、メリットもとても大きく、山でやりたいことによって、山岳会に入るメリット・デメリットは大きく変わってくるかと思いました。
また、山岳会は生活の一部になるので、どの会に入るかはとても重要!
本記事では、そんな山岳会のメリットとデメリットを、私が経験した感想を元にご紹介したいと思います。これから山岳会へ入ろうかどうか迷っている方へ、少しでも参考になりましたら幸いです。
山岳会へ入るメリット
山岳会へ入ると、とにかく効率的に登山スキルが身につきます。
一人だと気づかないようなことも、先輩方のサポートにより、隙なくレベルアップできます。
私は全くの初心者の状態で入会したので、効率的な歩き方から、テントの張り方、休憩のとり方、道具の選び方、地図の読み方、天気の読み方など、超初歩的なことから教えてもらえました。
基本的なことが身につくと、ロープワークや救命救急、遭難対策訓練、渡渉訓練、雪訓など、専門的なことも教えてもらえます。
この、専門的なことを身につける場として、山岳会のメリットは大きいと感じました。
ロープワーク等専門的なことが身につく
一般登山道を歩くだけであれば、本などで知識を蓄えつつ、ちょっとづつチャレンジしていけば、あまり問題ないかと思いますが、
ロープワークなどは、やはり個人で身につけるのは難しく、そして、誤った知識を身につけてしまった場合は命の危険にさらされるので、ここはきちんとベテランから手ほどきを受けるのが一番!
お金を払って、ロープワークの講習会へ行って身につけるという手段もありますが、
その場合は、一緒にロープワークを実践したり練習したりする仲間ができづらいので、なかなか身につかないと思います。
山岳会であれば、一緒に練習する仲間を探す苦労はしなくてすみます。
そして、同じ山岳会の仲間であれば身元がしっかりしているので、命を預けるような危険なロープワークも、安心して一緒に練習できますし、お互いのレベルを分かり合えた状態で一緒に山へ行けるのはかなりメリットだと思います。
沢登りは山岳会の一択
これからの季節、沢登りがとても心地よい季節になりますが、
この沢登りは、かなり危険が伴うので、ベテランでも一人で行くということは難しい分野だと思います。ましてや、未経験の場合は、ガイドなどの助けなしではチャレンジすべきではないと思います。
じゃあ、どうやってチャレンジしたらいいのか ということになりますが、
山岳会の一択だと思います。
ガイドツアーも時々あるので、時々体験できればいいというくらいでしたら、わざわざ山岳会へは入らずにガイドツアーでいいと思いますが、
積極的にしょっちゅう沢登りへ行きたい! ということであれば、もう山岳会が一番おすすめです。
遭難時のために
登山へ行く時は、必ず山行届を山岳会へ提出し、下山をしたら下山報告をすることになっているので、もし下山報告をしなければ、捜索隊を組んで探してもらえるというシステムになっています。
なので、必ず山岳会の誰かは下界で電波の届く所にいなければならなく、ここが毎週末山へ行きたい人にとってはちょっとネックかもしれません。
私が入っていた会では、緊急連絡先として家族の連絡先の他に、勤めている会社名・直属上司・電話番号まで提出することになっていて、この情報は山岳会みんなで共有しています。
個人情報! と思いましたが、勤務先については、主に一人暮らしの人用で、
もし下山遅延して月曜日出社出来なくなった場合、山岳会の人が会社へ代わりに連絡してくれるためのものでした。
そして嬉しいポイントは、大怪我などしていなくただの下山遅延の場合、家族になりすまし、「ちょっと体調が悪いので休みます」といった具合に連絡してくれるそうです。
沢の途中でビバークしてしまったら、携帯が通じないので、これはとてもありがたいシステムでした。
今は、欠勤連絡も電話ではなくチャットかメールだけという会社が増えてきたので、沢でビバークしてしまったらどうするんだろう・・・
一緒に登る仲間ができる
一人ではなく、誰かと一緒に登りたい! という方は、山岳会に入れば、何の苦労もなく仲間ができます!
そして、仲間で行けば、交通費も割り勘できてお財布にも優しく、気兼ねなく毎週末山へ行けますw
山岳会のデメリット
山岳会はメリットが多いですが、もちろんデメリットも。
個人での山行は行きにくくなる
たまには一人で、とか、山岳会以外の人とも一緒に行きたいな、と思うこともあるのですが、これがなかなか難しかったです。
私の場合は、たまには、ではなく、けっこう多めだったかもしれません。
山岳会という場は、レベルアップの目的以外にも、一緒に山へ登る仲間を提供してもらえる場でもあるので、わざわざそこへ入会しておきながら、一人でばかり行っていては「?」ということになるのはごもっともです・・・
2回目に入会した沢登り専門の山岳会では、一般登山道を歩く登山は、個人で行っても全く問題なかったのですが、総合型の山岳会は、たとえハイキングでも、なかなか一人で行くのは厳しい目で見られました。
なので、一人でも山へ積極的に行きたいと思っている方は、そもそも山岳会に入ろうとはしないとは思いますが、、
一般登山道は一人で、アルパインや沢登り・冬山などテクニカルな山は山岳会で行きたい という思いがある方は、入会前にしっかり確認しておいた方がいいと思います。
私はどちらかというと、一人が好きな方なので、山も一人が好きなのですが、2回目に入った山岳会はメンバーと一緒に行くのが楽しすぎて、あまり一人で行こうという発想になったことはありませんでした。
なので、きっとメンバー次第!
例会がある
だいたい、月に1回か2回のペースで、山岳会メンバーが集まって山行報告などをする例会というものがあります。
これは、人によってはデメリットで、ある人にとってはメリット。
私は、2回目に入会した山岳会は家族のように大好きな人たちばかりだったので、この例会はちょっとした楽しみでした。
例会が終わったあとは、汚くて安い居酒屋へ飲みに行くのですが、飲み会大嫌いな私も、この飲み会はいつも楽しみでした。そして、ここでお酒に強くなった気がします。
もし、山岳会のメンバーを好きでもなく嫌いでもなく、興味を持てなければ、この例会は苦痛になります。
事務作業など何かしら仕事がある
当然ですが、何かしらの仕事があります。
私は初心者のうちに退会してしまったので、ほぼ貢献できなかったのですが、会社のような仕事の割り振りがあり、自分の山行だけに集中するというのは難しくなります。
入会担当、ホームページ・会報作成担当、会長、会計、遭難対策チーム、新人教育係、例会担当などなど。
人間関係
どんな人がいるのか
ここが一番気になる所ではないでしょうか。
人の集まりなので、一般的な人の集まりにおけるメリット・デメリットは同じようにあります。
そして、デメリット部分は、日常での集まりよりもハードに感じます。
登山なので、数日間、朝から寝るまで、みっちり一緒にいることになり、泊まるところもテントですから、密着するくらい、とにかくずっと一緒にいることになります。
なので、心地よい人間関係を築けなければ、とてもじゃないけど楽しめません。
私が入っていた2つの山岳会を比較すると、
最初に入った総合型で比較的大きな山岳会は、ほぼ誰でも入会OKで幽霊会員も沢山いる会、
2回目に入った沢登り専門の比較的小さな山岳会は、初心者NG、入会はちょっとした審査あり、幽霊会員は認めない会、
と、2回目に入った山岳会はちょっぴりハードな感じですが、入会時に審査があることと幽霊会員は認めないため、変な人は一人もいなく、とても心地よい環境でした。最初に入った会は、誰でも入会できるので、素晴らしい方も沢山いましたが、?という感じの方もいました。
審査と聞くと、山岳会なのに大げさなと思われるかと思いますが、登山経験の確認の他に、他の山岳会のメンバーと仲良くやっていけそうかというところまで見てくれているので、就職活動のようで堅苦しいですが、入ってから人間関係でしんどい思いをしたくない方は、こうしたちょっとした審査がある山岳会を選ぶと間違いないのではと思います。
年齢層
山岳会へ入会を検討し始めたら、まずはホームページを確認し、良さそうだなと思ったら例会見学の申し込み という流れになるかと思います。
私はもちろん、まずはホームページでチェックしてから申し込みしました。
その時、年齢層には自分と同じアラサーが中心とか、20代から在籍とか書いてあったので、私と同じ年代の友達ができたらなという思いもありました。そこまで強い思いではありませんでしたが。
そして、いざ例会見学へ行って見ると、想定とは結構な違いがありました・・・
山岳会の人「なぜこの会を申し込んだの?」
私「自分と同じ年代がいるとホームページに書いてあったので・・・」
と、ついうっかり答えてしまいました^^;
山岳会の人「ああ、あのホームページを作った当初は、確かに30代中心だったんだけどね ずっと更新してなくて・・・^^;」
というやりとりが、2つ入ったどちらの山岳会でも行われました。
もちろん、若い人もいましたが、圧倒的に50代〜70代が多かったです。
リタイアされている方たちは、海外登山へも積極的で、当時は羨ましかったのですが、何歳になっても山に夢中でいる方たちを見て、登山を続けていれば健康的に長生きできて人生飽きないんだな と思いました。
驚きの洗礼
山好きな人に悪い人はいない とか言われますが、そして、確かに90%の人はいい人と10年山登りしてきて思っていますが、10%くらい、意地悪な人はいます!
山岳会という組織は少し昔気質な上下関係が残っていますので、新人いじめをしてくる意地悪な人はいました。ほとんどの人はめっちゃ親切ですが、やっぱりいます、意地悪おばさんが・・・まるで姑。
色々ありましたが、今でも忘れられない衝撃だった出来事があります。
当時の私は山スキーにとても憧れていたので、少ない給料から奮発して道具一式を揃え、スキー場で練習をした後に、先輩が初級の山スキーに誘ってくれたので喜んで参加しました。
深夜の集合場所に行き、ワゴン車に乗せてもらい出発。ウキウキして乗り込んだのに、出発した瞬間、
「ここはね、あなたのような人が来るところじゃないの!あなたのような初心者が来るところじゃないのよ、わかってるの?なんて図々しいのかしら。」
というようなことを延々と言われ続けました。
私は誘ってもらえたから参加したのに・・・ この小言は大きな声で言われていてワゴン車に乗っている全員が聞こえていたはずなのに、誰も私をかばってくれません。
こんな感じの人が、入会ハードルが低い大きな山岳会にはたまにいます。入会ハードルがある会には、このような変な人はいませんでした。
山岳会を辞めた理由
最初に入会した山岳会は2年ほどで退会しました。
不満があった訳ではなく(新人いじめのおばさんは嫌いでしたが)、大きな病気をして長い間山へ行けなかったのと、山へ行きたいのに行けない状況だったため、楽しそうに山の話をしている人に会うのが辛かったというのもあり、退会しました。
病気がすっかり良くなり、また登山を再開した時は、単独か、山で出会った人たちと、普通の登山を数年楽しんでいました。
そして、普通の登山に飽き始めて沢登りに興味を持った時、また山岳会に入ろうと、沢登り専門の会へ入会。
以前に所属していた総合型の山岳会は、沢登りをする人が数人しかいなかったので、毎週末でも沢へ行きたかった私は、沢専門の山岳会を選びました。
しかし、その山岳会も2年ほどで退会しました。
とても大好きな人ばかりで、私にとっては第2の家族と思えるほどの存在になっていたので、退会するときはかなり悩みました。
退会した理由は、厳冬期の北アルプスでちょっとした滑落をしてしまい、登山が怖くなって行けなくなってしまったためです。
山岳会を辞めてしまったら絶対寂しい! とかなり恐怖だったのですが、登山をしないなら所属し続けることはできなかったので、残念ですが退会しました。
辞めた直後は、ぽっかり抜け殻状態。趣味がない&友達ゼロのおじさんの退職直後並w それくらい、山岳会というところは私にとって生活の一部になっていました。
まとめ
山岳会は日本中に沢山あり、メリット・デメリットは共通していることではありませんが、私が過去に所属していた山岳会の様子から、これから山岳会を検討している方の参考に少しでもなりましたら幸いです。