予定通り下山できなくなってしまった時、予定外の山での1泊ビバーク。
こんな体験は滅多にしないと思いますが、私は2度経験してしまいました。
2度も経験するなんて、反省してない奴だと思われてしまいそうですが、2度のビバーク経験は、登山をはじめた最初の1年目だけ。
あれから12年経ちますが、もう一度もビバークはしていません。反省しましたので^^;
本記事では、ビバークした時の体験と、その時に感じていたことを書いていきたいと思います。
遭難予防などにお役にたてたら嬉しいです。
1度目のビバーク経験
テント泊1泊2日のグループ登山で、2日で下山できなくて2日目に予定外のビバークをして3日目に下山しました。
私はこのとき初めてのテント泊登山で、登山経験も日帰りハイキング数回程度。何もかも要領を心得ていません。
山の先輩たちに誘われるがままに参加。コースタイムなどは十分かどうかなど判断もできなかったので、先輩たちにおまかせです。(先輩といっても、まだ登山をはじめて2〜3年くらいの方たちで、これは入会した山岳会の新人グループ登山です。)
先輩たちも、普通よりもだいぶ多めに時間とってるから安心してね、と言ってくれてたので、安心して出発しました。
1日目はずっと登り。はじめての重たい荷物に汗だくになりましたが、問題なく目的地に到着。
無事にテント場では宴会をして眠ります。
2日目は下山。
ここで、先輩たちが予想していなかったアクシデントが。私の下山速度があまりにも遅くてびっくりされました。
私といえば、これが普通だと思っていたので、なんでびっくりされるのか理解できません。
坂道を下るなんて怖いから、ゆっくりになるに決まってる!と(笑)
今はしっかり自覚しているのですが、私は平均よりもかなり下山が苦手で遅いということが判明しました。
この時に一緒に登ってくれた方たちとは、1度、日帰りのハイキングに行っていたのですが、その時よりも下山道の斜度が急だったので、私は一気に速度が遅くなっていました。
そういえば、電車の駅のホームへ階段で下るとき、電車のドアが閉まりそうと友人たちが駆け下りて行く中、私は駆け下りることができなくて、同じ電車に乗れないなんていうことが何度かあったことを思い出します。
私はどうも「下る」動作が先天的に苦手みたいです。そして、斜度が急になればなるほど、速度は一気に遅くなってしまいます。
何年も登山を続けるうちに、マップタイムどおりくらいには下山できるくらいにはなりましたが、それ以上には上達しません。
走り降りるなんてもってのほか!
下山=斜度が怖い という気持ちの問題なのかなと思っています。階段も、走って登ることは全然平気なのですが、走り下りることは怖くてできません。
ということで、私の下山スピードが期待をはるかに超える遅さだったために下山できなくなり、ビバークとなってしまいました。
この時、テント泊装備だったので、ビバーク用品は十分にあり、道迷いした訳ではないので、登山道の脇に見つけた安全で平らなところにテントを張って寝袋で寝られたので、苦痛なことは一切ありませんでした。唯一の苦痛は、私のせいで下山できなかったという申し訳ない気持ちでいっぱいだったことです。
食料は予備食があったので、空腹で辛いこともありません。
ただ、水がほとんどなかったことが盲点でした。
みんな、下山できないなんて1ミリも思っていなかったらしく、水はあまり多めに持っていませんでした。
水がないとせっかく持っている予備食も調理できなくて食べられない と困っていたら、幸いなことに、単独行の男性が同じ場所でビバークすることになるという、すごい偶然が起き、そして、この方がかなり余分に水を持っていたので、分けてくれ助かりました!
翌朝、この男性は朝からワインを飲んでいてびっくりしたのですが、もう水がないから代わりに飲んでます と・・・
自分に必要な分まで分けてくれていたなんて・・・ 頭が上がりません。
一緒に下山したので話をしたのですが、沢山の水を持っていたのは、以前、この時の私たちと同じような過ちをしたことがあり、そして他の登山者に助けてもらったという経験から、水は余分に背負うようになったとのことでした。
また、前日に私たちの下山風景を目撃していたそうで、てっきり私が怪我をしたのだと思ったそうです(笑)
こう言われて、私はとにかく下山が苦手なんだということを自覚し、下山はコースタイムの1.5倍以上、できれば2倍あると安心という目安をとるようにしました。そうすると、なかなか一緒に登ってくれる仲間が見つからなくなり、一人で登るようになり、一人登山って気楽でいいなーなんて味をしめてしまうようになりました。
今はマップタイム通りくらいには下山できるようになりましたが、それでもやっぱり誰かと登る時は、下山の時はとってもドキドキしてしまいます。グループの時は、このドキドキはさらに大。一応、はじめて一緒に登る人には必ず、下山が苦手だということは申告するようにしてます。
2度目のビバーク経験
登山をはじめた1年目。ハイキングにはじまり、テント泊登山、アルプス登山を経験していく中で、沢登りという登山スタイルを知りました。
その写真を1枚見ただけで、なんて楽しそうなんだ!!!! と、もう、沢登りを体験したみたくてどうしようもありません。
そこで、入ったばかりの山岳会の先輩に頼んで沢登りに連れていってもらいました。
はじめての沢登りは特に問題なく、そして沢登りは最高だ!といい気分で終わりました。
そして、楽しかったから当然また行きたくなります。
ということで、同じ先輩方に2度目の沢に連れていってもらいます。
この時の私は、沢のグレードとか、遡行図の読み方はおろか、遡行図の存在自体も知りません・・・ 確か、2万5千分の1地図くらいは持っていったような気がするのですが、地形を見ながら地形図を読み判断する能力なんてまだ無かったので、ただの飾りでした。
全てが先輩任せです。今思うと、なんて愚かで、なんて失礼な奴だったことか・・・
この時行った沢のグレードは、後から知りましたが中級。
先輩方は、1度目の沢登りで問題ないと判断して連れていってくれたのだと思いますが、私にとっては恐怖の連続でしかありませんでした。
はじめての沢登りは初級コースでとっても楽しかったのですが、2度目の沢は、怖くて怖くて、とにかく怖かった!
ビビりまくってる私を先輩はサポートしなければなりません。とっても疲れたと思います。
ビビる私をサポートするので疲労してしまったのが大きいかと思うのですが、途中でルートを見失い、道迷い突入。水源は通り越していたので、水のない乾いた急斜面の薮をひたすら彷徨います。
正規ルートで怖いと感じる沢だったので、ルートから外れてしまったら、その恐怖の度合いは何倍にも膨れ上がりました。
ちょっとミスったら滑落して死ぬじゃないか!!!というような場面を、涙目になりながらひたすら進み、普段使わない上半身も酷使しなければならなく、何度もリタイアしたくなりました。
(もちろん、滑落の危険がある場所は必ずロープで確保してくださいました。ベテランだったらロープいらないような場所でも。これがまた余分に時間をロスしたんだと思います。)
リタイア=死
です。
リタイアしたいのにリタイアできない
ゴールの見えない彷徨いに、何度も弱音を吐きたくなりましたが、ここで弱音を吐いてしまって先輩たちに見捨てられて確実に死ぬ
という恐怖から、弱音は一切口にしませんでした。
「人間の生きたい!」という本能はすごい。
なぜ生き続けたいのかはわかりませんが、死にたくはないんですよね。
この時私は神様に祈りながら進んでいました。「もう、このような危険な登山は2度としません。だから、どうか生きて下山させてください」と。
危険箇所をひたすら彷徨い続けるうちに、暗くなりはじめ、いよいよビバークを決心することになります。
ビバーク道具は、ツエルト・ガス・コッヘル・サバイバルシート。
水源を越えた後だったので、水は限られていましたが、水源を超える時に水は確保していたので大丈夫でした。この、水源を越える時の儀式の重要さを、身にしみて覚えました。
予備食はなんとありませんでしたが、この日の沢登りがあまりにも怖かったので、食欲がなく、食料は余ってました。
こんな時は、お互いが持ち合わせている食料をチビチビ分け合いながら過ごすという映画のシーンが思い出されますが、この時食料についてどうしていたか記憶が吹っ飛んで忘れてしまいました。ただ、お腹がすきすぎて辛かったなんていう思い出はないので、あまりにも怖くて食欲なんて無かったんだろうと思います。
ビバークを決めた時、かろうじてツエルトが張れる斜面を見つけます。
眠ってしまったら滑落してしまいそうな斜面。ロープで枝と自分を括り付けて体育座りで朝を待ちました。
沢登りなので全身濡れています。この時私は、着替えを持ってませんでした。
装備表には着替えがちゃんと書かれてあったのですが、私はあえて着替えを持っていかなかったんです。
沢登りで全身濡れて登った後、着替えて下山するということを1度目の沢登りで知り、そして、着替え室なんてないから女性は恥ずかしくて着替えなんてできないじゃないか!と学習し、どうせ恥ずかしくて着替えなんてしないんだから、着替え持っていく必要ないよね と浅はかな私は着替えを持っていきませんでした。
全身濡れている中、日が沈み冷えた山の中ではどんどん冷えていきます。着替えの重要性を本当に実感しました。
ツエルトに入ると、けっこう暖かく、そしてガスコンロをストーブ代わりにするとさらに暖かく、濡れた服のままでもなんとか過ごせました。さらに、サバイバルシートを被るととても暖かくホッとできました。
サバイバルシートを買った時は、これを使う日なんて永遠に来ないと思いながら買ったのに、購入から一年未満で使用することになるとは・・・。
ガスは小型のものが1つ。一晩中つけっぱなしはできないので、1時間のうち15分だけ使おうと決めて使用しました。
夜明けまで、とても長かった。
少しでも眠れたらよかったのですが、私は一睡もできなかったので、とーーーーっても長く感じました。
少し目をつぶっては目を開けて時計を見て、まだ10分しかたってないのか・・・とがっかりするのを永遠に繰り返す感じです。
一人ではないので、おしゃべり相手はいるわけですが、話題なんてお互い何も思い浮かびません。
そして、朝を迎えたとしても、無事に下山できる保証なんてないですから、不安しかなくてさらに目が冴えてしまいます。
こんな中、一人の先輩はイビキをかきながら熟睡されてました。
その先輩を見て、不安しかなかった私は安堵感を覚えました。熟睡していた先輩は長ベテラン。
こんなことはきっとよくあることで、明日はきっと無事に下山できるんだろうと。
一睡もできずに朝を迎え、行動開始。
先輩方についていくしかない無能な私は、必死についていきます。
2時間くらい頑張ったところで、やっと登山道に出ることができました!
ああ、まだ生きることができるんだ!!!!!
本当に嬉しかった。
この登山道は、昭文社地図には危険マークがついているところで、普段の私だったら、「やだー、こわい!!!」と思うような道なのですが、散々恐怖なところを登ってきたせいか、全く怖くなかったのが不思議でした。
短期間でレベルアップしたかったら、身の丈に合わない無理をすると成長が早い という法則は間違いないありません。
このビバークでは、下界で待ってる人に連絡ができなかったので救助体制が準備され、多くの方にご心配ご迷惑をかけてしまいました。
2度のビバーク経験で反省したこと
一人で行ける自信がない山は行かない
これにつきます。
これではもちろん成長できないので、自分の実力以上のところへチャレンジする場合は、自分の実力の1歩上に留めるようにしています。
一人で行ける自信がない山へは行かない という教訓は、人任せにしてしまう癖がある自分への戒めでもあります。
どうも私は、人に頼ってしまう癖があります。
登山1年生の時は、自分でちゃんと調べていなかったし、自分の実力も把握していませんでした。
私がどれくらい登れるのか なんて誰も興味ないわけで、私自信がきちんと把握しておかなければなりません。
また、一人で行くとなると入念に調べあげるのに、誘われたグループ登山となると、事前リサーチがどうしても甘くなってしまう自分がいることに気づきました。
“事前リサーチが甘くなる=自分の実力に合ってるのかどうか、きちんと判断できていない”
こんなことを避けるためにも、常に、一人で行くことを前提として計画するのが一番 と思っています。
水は余分に背負う
水は重たいので、どうしても必要分しか背負いたくないという気持ちが芽生えてしまいます。
沢沿いをずっと歩くのであれば、aquaquなど殺菌剤を持ち歩いていれば問題ないですが、水源がない場所を歩く場合は余分に水を背負うのは私は必須にしています。
荷物が重たいせいで予定通り進めなくてビバークになってしまったら本末転倒ですが、負担にならない程度の余分な水は必須と思っています。また、aquaquは軽量コンパクトなので、非常用セットにおすすめです。
こんなにコンパクトで重さはたったの2.5g!コップ約600杯分の水を除菌できます。
あって良かったビバークアイテム
ビバークアイテムはなかなか買う気がおきないアイテムですが、2度のビバーク経験から、決して喜んで買った訳ではないけどあってよかったアイテムはこちらです。
薄い布一枚が、こんなにあたたかいなんて!
沢登りの宿泊は、テントじゃなくてツエルトのことも多いので、これは山で一夜を明かすのに必要最低限の機能を持っていると思います。
これがあるとあたたかいということと、動揺した心を少しだけ落ち着けさせる安心感があると思いました。
このペラッペラなシートはかなりの優れもの!とってもあたたかくて驚きでした。災害用にも1枚持ってるといいと思いました。
一度開封して使ってしまうと、元に戻せなくなるので、基本的には使い捨てになります。
そしてあとは、水と非常食です!
非常食は、好きな食べ物だといざという時には無くなってる可能性が高いので、あまり好きではないものが最適だと思います。